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サイバー攻撃をめぐるロシアに対する非難について

2017年2月9日、モスクワのブリーフィングにてロシア外務省ザハロワ報道官がコメントした。

サイバー攻撃をめぐる米国政府・オバマ前政権によるロシア非難は、今や世界を席巻しさらに広がりを見せている。残念ながら、フラッシュモブや新たな同調者を次々と巻き込んで、西側メディアにおける反ロシア情報キャンペーンはさらに勢いを増していると言わざるを得ない。

ここにきて、ノルウェイ、カナダ、英国、オランダ、チェコ、エストニアの各国も「サイバー攻撃被害の名乗り」を上げている。そんなにたくさんハッカーがロシアにいるわけがないのに!まずノルウェイの話から始めよう。隣国スウェーデンに感化されたと見えるノルウェイ警察公安当局が、同国政府機関がいわゆる「クレムリン・ハッカー」によるサイバー攻撃にさらされていると発表したのだ。対象となった中には、ノルウェイ外務省、軍隊、ノルウェイ労働党、大学、そして当の警察自体も含まれるという。今なお調査は継続中と言うにもかかわらず、とてもあり得ない話だが何の事実も証拠もないままに犯人を特定している。すべてが事実無根で、証拠となる記録などどこにもない以上、検証も一切されていない。

同様な状況はオランダでも見られる。オランダの専門家によれば、ロシアン・ハッカーの標的となったのは、政府機関や議会が集まり首相執務室も位置するオランダの中枢「ビネンホフ」であるという(つまり、それほど深部にまで入り込んだというわけだ)。オランダ社会をさらに不安にしたのは、かつてNATO事務総長を務めた前外相ヤープ・デ・ホープ・スヘッフェル氏の発言である。同氏によれば、議会選挙が今年3月に行われるという点でオランダは「ロシアン・ハッカーにとって魅力的」な国になっているという。もうお分かりだと思うが、要は、「ロシアン・ハッカー」とは議会選挙や大統領選挙を「糧にして」こうした選挙が行われる地域や国を標的にする現象、ということだ。デ・ホープ・スヘッフェル氏のロジックに従えば、「ロシアン・ハッカー」の関与は実施された選挙の結果から判断できることになる。オランダではマスコミによるヒステリックなまでの扇動に政権メンバーまでもが積極的に加わっている。しかも彼らは言葉を選ぼうとしない。何ら証拠がないにもかかわらず、公式の場でロシアを名指して「サイバー攻撃の元凶」と呼んでいる。

こうした状況はカナダにも及んでいる。どうもロシアがハッカーを利用して米国の大統領選挙に関与したらしいと考えたカナダ首脳部は、自国での選挙をサイバー攻撃から守るため然るべき対策を講じたことを急遽発表した。さらに「火に油」を注いでいるのが、米国の「引退組」だ。主にロシアの「クレムリン・ハッカー」による非常事態がカナダで発生するのを予防しようと、彼らは頻繁にこの国にやってくる。米国家安全保障局(NSA長官、中央情報局(CIA長官などを歴任したマイケル・ヘイデン氏はカナダを訪れた折に「ロシアン・ハッカー」こそがカナダにとっての主要な脅威だと述べた。いかに大げさな話になっているかおわかりいただけると思う。サイバー攻撃発信源の特定方法について聞かれると、21世紀の世界に生きるヘイデン氏は次のように答えている。「全体主義的な傾向が強い国ほど国家がらみのサイバー攻撃を行うものだ」と。ならばマキャベリの著作をのぞいてみるのが良さそうだ。役に立つ内容の一つや二つがきっと見つかるはずだろう。

英国のマイケル・フェロン国防相も、でたらめなロシアン・サイバー攻撃神話にとりつかれた一人だ。フェロン氏はスコットランドの大学で露英関係に関するスピーチを行った際、本来なら安全保障上のリアルな脅威への対抗策としていかに両国の協力関係を構築していくか真剣に論ずるべきところ、スピーチの大部分を「ロシアン・ハッカー」への言及で費やしてしまった。その中で彼は、ブルガリア、オランダ、フランス、ドイツ、モンテネグロの各政府機関に対するサイバー攻撃を挙げ何の根拠もなくロシアを非難している。フェロン氏によれば、「ロシアは常に西側の対応のレベルをチェックし、同時に英国同盟諸国の国家安全保障を損なおうとしている」そうだ。こうした発言が世界主要国の国防大臣のものであることには驚かざるを得ない!神話でしかない「ロシアン・サイバー攻撃」の方が、国際テロリズムなどよりも彼にとっては大きな脅威であるかの印象さえ受ける、というよりむしろそうに違いない。ある意味これは理解できる。というのも、国際テロは現実に存在し、これと闘うことが可能なものだ。もちろん闘うか否かはそれぞれの国家の自由であるが、いずれにしてもこれに関する責任はとらなければならない。一方ロシアの「クレムリン・ハッカー」の話は大した戯言だ。「クリムリン・ハッカー」とは一体誰なのか、どこにいてどこからサイバー攻撃を仕掛けているかは誰も知らない。しかしどうやって彼らと闘うべきか、そしてそのためにはどれだけの追加予算が必要なのかは皆知っている、というわけだ。

フェロン英国国防相はスコットランドの大学で行ったスピーチの中で、ロシア領土内からロシア人が実行した各国政府機関へのサイバー攻撃の対象にはドイツも含まれる、と語っている。時を同じくしてドイツの「南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)」は、ドイツ諜報機関による一年に及ぶ調査の結果ロシア政府が反ドイツ政府キャンペーンを組織していたことが明らかになった、と伝えた。一方記事の中で引用された政府関係者の言によれば、この件へのロシア政府の介入を確証する事実は見つかっていないという。このようなことがありうるだろうか。我々が見聞きしている内容は、すべて公人やついこの間まで各国政府を代表してきた人物による発言なのだ。「南ドイツ新聞」の記事について言えば、何ら情報操作もハッキング介入もなかったことをドイツ当局者が理解するには(政府消息筋の言を借りれば)一年も要したのか、と指摘させていただきたい。ところでここで疑問となるのが、多くの国々が病的にまで神経質になっている中、なぜドイツでは今になって突然上記の政府関係者の発言を含む記事を発表したのか、という点である。あるいは、「ロシアン・ハッカー」やロシアによる情報介入の問題を取り沙汰していると自国の選挙結果の正当性を損なう可能性があるということに、ドイツ政府は気づき始めたのではないだろうか。

逆説的に言えば、実際には誰がハッカー攻撃や盗聴を行っていたか、確実な証拠があるということだ。ドイツに関して言えば、誰が誰を監視追跡していたかすべて明らかになっている。その上で、実際には何の関与もしていない国家にすべてを押しつけようとしているのだこれこそ明らかな情報キャンペーンではないか。