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国連安保理公式会合「国際平和・安全の維持と国際法の推進」におけるD.ポリャンスキーロシア次席大使の演説

議長、

ロシア代表団は本日の審議を歓迎するとともに、これを提唱されたポーランド代表に感謝申し上げます。またご意見を述べられたヴィオッティ氏、オヴァドゥ氏、メロン氏にも感謝いたします。

本日の議題は重要かつ非常に時宜を得たものです。国連、国際連盟、そして更にその基となった由来に我々を立ち返らせるとともに、現在国際連合憲章という形で結実している国際関係の基本を振り返る機会となるものです。

国際連合憲章はその前文において、連合国の人民は『正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立』することを決定した、と宣言しています。このほかにも、すべての加盟国の主権平等や国内事項への干渉の禁止、安全保障理事会の承認を得ない武力行使や自衛の枠を越えた武力行使の禁止といった国際関係の基本となる規定や原則を定めています。

議長、

ロシアは一貫して国際的な法秩序こそが平和と安全の維持のための基本であるとの立場に立ってきました。1899年の昔、ロシア皇帝ニコライ二世の提唱の下、第1回ハーグ平和会議が開催されました。この会議において初めて、戦時国際法が体系化されるとともに国際紛争の平和的解決のための手段が定められたのです。また、文明の基準を示す画期的段階を示すものとなったニュルンベルク諸原則についても、ロシアはその策定に大きく貢献しています。

これらの法や原則が目的とするのは、第二次世界大戦が残した厳粛なる負の遺産や過去の過ちを世界が二度と繰り返さないことです。国際連合憲章およびこれに立脚する国際法は、国際関係の堅固な基盤となっています。「自ら生きる。他者をして生かしめる。助けを求める者には手を差し伸べる」― これは一見簡単なことに見えます。しかし、ポーランド代表が本日の会合の審議要旨で正しく述べられたように、国際法の侵害は世界の多くの地域で今なお続いています。

付言させていただければ、個々の法律や規則のみならず、これらの基本となる国際法の原則までもが侵害されているのが現状です。国家間の誠実と協力という原則は、しばしば軍事的・政治的圧力や制裁に取って代わられます。これは、世界はを国際紛争がすべて武力によって解決されていた連合憲章以前の時代に引き戻してしまうものです

依然として一部の国々は、世界は彼らの基準に従うべきだと考えているようです。世界が彼らの国内法や国内規則に従い、さらには彼らの国益に応じるべきだというのです。かねてから存在した例外主義と優越主義という思想は、こうした国々の国際的事項へのアプローチの基本として今、なお残っています。国際社会の他のメンバーに対して自らの意思を強要しようとする無責任かつむこうみずな試みは、一時も止むことがありません。

おそらくこうした国々はいまだに植民地時代のアプローチを堅持していて、世界の国々を二分してとらえているのでしょう。一方はあらゆる権利を享受する国々、そしてもう一方は国際関係において法規範が適用されることのない国々です。国家政策という名の強請り・脅迫・扇動や主権国家に対する非合法の武力行使という行為もこうした考え方に端を発しています。強請り行為については本日赤道ギニアの代表が言及されていましたが、我々もその懸念を共有いたします。このような行為は断じて見過ごしてはなりません。

この種の行為は、世界や地域の安定を大きく損なうとともに、過激派やテロリスト的思想の拡大にもつながります。結果として、世界情勢は恒常的な緊張状態に陥り、ますます予測しがたいものとなっています。

議長、

この観点から先頃シリアで起きた出来事の分析は多くを物語っています。まず一つ質問をさせてください。米国およびその同盟国の軍隊が、過去においてそして今もなおシリア国内に駐留している根拠は何なのでしょうか。ご存知のように、シリア合法政府は米軍を招いてはいません。テロリストとの戦いにおいては友好国の援助を受けてシリア政府自身で成果を上げいるのですから。当初米国の同盟国の中には下手な根拠づけとして、テロリストに対する自衛を引き合いに出すものもありました。今ではこの招かれざる客は「地政学的安定」という命題を戴いて、自らの軍事駐留を正当化しようとしています。しかし、それでは国際法はどうなってしまうのでしょうか。このようなケースに備え、西側には『illegal, but legitimate(非合法、だが正当)』という公式がとっくの昔からあるのです。

2018年4月14日に行われたシリア攻撃は、国際法ニヒリズムの骨頂となりました。攻撃の口実は前もって周到に準備され、しかもそれはとんでもないでたらめでした。仮にどこかの国が何かしらを侵害したとしても、その報復としての軍事的制裁は国際法上禁止されていることは誰もが知っているはずです。

国家に対する武力行使は、安保理の承認がある場合、もしくは防衛に際してのみ認められま。これを定めたは国連憲章第2条4項および第51条は、憲章の中でももっともよく知られ、またもっとも広く引用される条項です。本日は、この問題に関するプーチン大統領による2018年4月14日付声明を安保理資料として配布いたします。

この状況において、米英仏の三国が4月14日の自らの行動を特に正当化する様子もないことは驚くに値しません。国際法の観点からその行動の違法性は明らかであり、彼ら自身それを十分承知しているのです。

躊躇することなく自らの名において侵略行為を指摘しようと本日ポーランド大統領がおっしゃったのは、まさしくこのことだと思います。そして今まさに、私はそれを実行しているのです。

唯一何かしら説明しようと試みたのは、英国政府です。それとても、『人道的介入』という概念を持ち出してシリア国民のさらなる苦しみを防ぐための必要措置だったと述べるに留まりました。しかしご存知のように、この概念は国際社会によって単なる抽象的理論としてさえも却下されています。ましてや、これを以て主権国家への武力攻撃を正当化するルールとしようなどとは、まったくばかげた話です。

要は以下の通りです。国際連合創設の提唱国であり核保有国でもある安保理常任理事国三国が、国連憲章の武力不行使条項をもっとも擁護すべき理論上の立場にあるにも関わらず、主権国家に対して攻撃を行ったのです。しかも安保理では、多くの国々がこれに同調し擁護しました。このような非常識な行為を手でこまねいて見過ごしたとしたら、明日には同様の行為が今日黙して声を上げない国々に対して行われうるというのは明らかではありませんか。

こうした状況下、外部プレーヤーがこのような行動をとる中で国連および安保理は中東、ことにシリアの政治問題の解決に当たらなければならないのです。

さらに驚くべきは、まさにこのプレーヤーたちが他の国々に対して国際舞台における行動規則について教えを垂れようとしていることです。人に何かを教えようという道徳的権利などとっくの昔に失っているのに。

ウクライナの国内危機もまた、外部プレーヤーによる国際法の著しい侵害がもたらした結果です。ここで侵害されたのは、国内事項不干渉の原則です。違憲クーデターや政府対自国民の戦争をもたらしたウクライナにおける対立が、そもそもは外部によって引き起こされたものであることは周知の事実です。その結果として生じたのは、国全体を覆う混沌、不法状態、経済崩壊、ナショナリズムの嵐、過激主義であり、それはウクライナ周辺各国にも及ぼうとしています。誰もが恥ずかしそうにこの事態から目をそらしています。

本日ポーランド代表はウクライナについて話をされました。しかし、昨今ウクライナ政府が第二次世界大戦時にヒットラー側について何十万というポーランド人、ユダヤ人、ロシア人の殺害に関与した者を賛えていることについてはあえて言及されなかったようです。最も重大な犯罪のプロパガンダに黙して同意し、同時にニュルンベルク裁判所の決定を相殺することにはならないでしょうか。

もし皆さんが政治的な理由や何らかの思惑でこうした点に気づかないことにするとしても、われわれにはそうした制限はありません。ウクライナ政府をして東部に住む自国民と対話をさせるよりも、すべてをロシアのせいにした方がはるかに簡単なのは明らかです。

我々にはクリミア半島についての講義を聴くつもりはありません。クリミア半島のロシアへの編入は国際法に完全に適合しており、かつ自己決定権にも応じたものです。これは、解決済みの問題です。ウクライナ代表の演説に先立ち、その中で予想される悪意あるほのめかしや当てこすりに対して我々の側からは何の反応もするつもりがないことを予め申し上げておきます。もっとも、ウクライナ代表のスピーチに何か目新しいものがあるだろうとは思いませんが。

議長、

もう一点、取り上げなければならない問題があります。これは、国連の信任を受けた外交団の仕事に直接関係する問題です。先頃米国政府は、自らが罰せられることは決してないとの確信を持ったようで、一方的に外交領事関係法の書き換えを始めるという挙に出ました。同様に、国連本部が自国領土内にあるという特権を米国政府が悪用しているという点も、言及いたします。要は、外交団に対するあからさまな制裁措置がとられているということです。

先だってのロシア外交官の大量国外追放は非常に露骨なケースでしたが、残念ながらこれだけではありません。米国内のロシア所有不動産が差し押さえられ、その中にはロシア国連代表部の事務所も一部含まれていました。様々な機関のロシア代表部の外交官に対して25マイルゾーンの自由移動に制約が課されました。米国ビザの発給や延長についても多くの遅れが生じました。外交領事関係法や国連本部協定の米国政府による露骨な侵害は日常茶飯事となりました。これは、国連全体またその加盟国にとって非常に深刻な問題です。決してロシアと米国の二国間関係の話ではなく、国際法の侵害という問題である点を強調したいと思います。

議長、

ロシアは一貫して、国際レベルにおいて法の支配を強化する必要があるとの立場をとってきました。

ロシアは2016年には、国際法の推進に関する共同声明を中国とともに発表しました。声明では、不干渉の原則、国家の主権平等、武力不行使、一方的強圧措置の排除、国外での国内法適用による国際法の侵害の禁止について言及し、その中でも特に焦点があてられたのは紛争の平和的解決の原則でした。

声明では、この原則を支持する我々の堅い決意を確認するとともに、各国は相互同意に基づく手段やメカニズムを利用して紛争の解決に当たらなければならないという我々の信念をも表明しています。国際的法秩序を維持するためには、こういった紛争解決のための手段やメカニズムを善意を以て利用し、悪用や濫用によって目的が損なわれないようにすることが肝要です。

議長、

最後に、国際法の支持と推進および国際法に基づく公正かつ平等な秩序の構築を目指す国際的対話において、我々は責任あるすべての参加国と一層協力していく決意であることを改めて強調し、締めくくりとさせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。