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OPCWをとりまく状況に関する駐日ロシア大使館のプレスリリース

ハーグで6月27日、イギリスを初めとする欧米各国の主導で召集された化学兵器禁止条約(CWC)締約国会議特別会合が終了した。ロンドンやワシントンなど、CWC体制の強化を騙る偽推進派は、政治的操作、一連の代表団の買収、あからさまな恐喝の結果、シリアでの化学兵器使用の責任者を特定するという、本来的ではない権限を化学兵器禁止機関(OPCW)技術事務局に付与するという醜悪な決議案を通過させることに成功した。

さらに、他の締約国の領内で化学物質が兵器として使用された場合に、同締約国の要請に応じて「実行者、首謀者、スポンサー」を特定するための技術支援を行う同様の捜査メカニズムの設置に関する提案を2018年11月に開催される通常会合に提出することもOPCW技術事務局長に委任されている。

欧米諸国が押し付けた締約国会議の決議は、OPCWの機能性や全体性、ひいては世界の不拡散体制全体にとって極めて深刻な、破局的とも言える影響をもたらしかねない。

この決議は不当である(111ヶ国がこの決議と自国を関連付けていない)。決議はCWCに明らかに違反しており、国連安保理の独占的権限を公然と侵害し、第二次世界大戦後に形成された国連と安保理を中心に据える体制を脅かすものである。

欧米諸国の提案した決議が採択されたとき、締約国会議は自らの権限を逸脱した。CWCの初期メンバーであるロシアが本条約に加わった際、ロシアが加盟した機関は全く別の組織であった。OPCWには、化学兵器廃棄に関する国家プログラムに対して技術支援を行うという明確に定義された課題があった。CWCには、必要な場合にOPCWの活動の具体的側面を改訂するための皆が納得するメカニズムが規定された。

CWCの対象と目的は明確に定義されている:化学兵器の開発、製造、取得、貯蔵、保管、使用を控えること、および、このような活動を他者に奨励したり促したりすることである。条約の第1条には、上記の義務を実現するための手法が網羅的に列挙されている。OPCWには、締約国が上記課題を実施するにあたり、それらの国に技術支援および専門家支援を行い、検証手続きを実施するという極めて実用的な役割が与えられている。

このように、CWCには、化学兵器使用の責任者を特定する何らかの特別なメカニズムの設置の可能性を想定するような条項は一切含まれていない。条文を「開くこと」なく、CWC第15条に規定された手順に則って条文を改訂することもなく、OPCW事務局にこのような権限を付与することは、定義上、不可能である。しかし、こうしたことはすべて、OPCW技術事務局長に限定的機能を付与することを発案した者たちによって、あつかましく無視された。さらに、今回採択された決議に従えば、OPCW技術事務局長は、前例のない、そして監視の効きにくい権限を与えられることになる。実質上、事務局長は単独で、国連加盟国が大量破壊兵器の使用において有罪であるか無罪であるかの決定を、それに伴う全ての影響も含め、下すようになるのである(その際、事務局長に欧米のプロンプターが付くのは明らかだ)。条約締約国側からの抑制、カウンターバランス、監視は一切、想定されていない。

イギリスとそれに同調した国々は、CWCの真の目的と課題に対するあからさまな偽装と、冷笑的なすり替えに走った。その際、条約の主目的のひとつである化学兵器の包括的廃棄が未だに達成されていないことには、偽善的に口をつぐんでいる。条約の義務に違反しているのは欧米の主導国であるアメリカであり、この国が大量の毒性化学物質の所有国であり続け、廃棄期限を常に先延ばしし続けていることを、必死に隠そうとしている。今回採択された不当な決議の発案者は、現実的に誰ひとりその存在を証明してない化学攻撃について、その「責任者を特定する」という偏見に満ちた、全く別の課題に注意を逸らそうとしている。

私たちの論敵の言う、締約国会議で欧米陣営が「圧勝」し、ロシアは国際場裡で「孤立を深めている」というテーゼは全くの虚偽である。アメリカを筆頭とする欧米諸国は、締約国会議の特殊な投票手続きを利用し、実質上、OPCW加盟国193ヶ国のうち82票という、過半数以下の票でイギリスの決議案を通過させた。中国、インド、南アフリカなど(計24ヶ国)が私たちに同調する票を投じた。

私たちは依然として、常識を備え、責任あるアプローチをとるOPCW加盟国と緊密に連携し、CWCを遵守した上で、悪しき決議の悪影響を打ち消すためにあらゆる可能な手段を使っていくことを期待している。この決議は、かつて不拡散分野で最も成功した技術組織を、一国もしくは少数国家のグループに有利に働く「ウォッチドッグ」に変えてしまうものである。現状のすべての危険性を認識するよう呼びかける。これはシリアだけの問題ではない。これはあくまで、欧米にとって潜在的に不都合な国を「正当に」排除するための新技術を試す「観測気球」でしかないのだ。これまでの経験が語っているとおり、現状では、軍事攻撃の実施という強硬で前例のない決定を下すにあたっても、欧米諸国には絶対的な証拠など必要なく、インターネット上のいくつか動画と、偽責任者の「可能性が高い」という発言だけで十分なのである。同僚の皆さんに対し、この状況を真剣に考えるよう呼びかける。欧米の「気に入らない」国はどこでも、欧米シナリオの法的混沌の犠牲者になり得るのである。

今、私たちの共通の課題は、OPCWの活動の極めて危険な傾きを修正するために協力することだと考える。OPCWは、その立場と当然の権威を目に見えて失いつつある。