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OPCWでのブリーフィング後に、ドゥーマ(シリア)の住民が出席して実施された記者会見でのA.シュリギンOPCWロシア常駐代表の冒頭挨拶 (2018年4月26日、ハーグ)

こんばんは。本日の記者会見を始めます。

ハーグは世界の法律の首都として名を馳せています。そのハーグが、昨今、この数週間は、さらに世界の化学兵器の首都ともなっています。それは、ここに化学兵器禁止機関(OPCW)の本部があるからです。この1週間、OPCWでは執行理事会の特別会合が次々に開催され、広くメディアに取り上げられた今年4月7日のドゥーマでの事件を含め、さまざまな問題について熱い議論が交わされています。ちょうどこれに関連して、私たちはOPCW本部でシリアとともにブリーフィングを実施しました。改めて4月7日のあの事件に立ち戻るためです。

私と並んで座っている人々を紹介いたします。右側がロシア連邦放射線・化学・生物学防護部隊長のキリロフ・イーゴリ・アナトリエヴィチ少将です。左側はOPCWのシリア常駐代表であるG.オベイド氏です。その隣が本日の主役であるハサン・ディアブ君と父親のオマールさんです。そのほか、ブリーフィングと記者会見に出席するため、ドゥーマから直接ここハーグに来られたシリア国民の方々も座っています。

まず、今日、私たちが行っていることは、OPCW専門家のドゥーマでの作業を一切損ねるものではないことを申し上げます。OPCWの専門家はすでに2回ドゥーマを訪れ、自らのスケジュールに沿って作業を進めており、どこを訪問しなければならないかを理解し、必要な面談を行なっています。私たちとしても、技術事務局と専門家の方々には、シリア滞在の機会を活かして、ドゥーマで発見された武装勢力の地下化学ラボを視察していただけるよう積極的に呼びかけます。このラボは化学兵器の製造に使われ、各種の挑発活動を実行するための兵器も製造されたと私たちは考えています。ここでなんらかの遅滞は許されません。

4月7日にダマスカス近郊のドゥーマで起こったことが挑発行為であることは、私たちには最初から分かっていたことです。私たちにとって、これは予想外の出来事ではなかったのです。これから、私のよき友人であるDr.オベイドに自ら語ってもらいますが、シリアはOPCW技術事務局に対して数えきれないほどの口上書を送り、同じ内容の書簡を国連安全保障理事会にも送りました。その中で、挑発行為の準備が行われていることが語られてきました。ちなみに、プーチン大統領も、4月4日にアンカラで行われたロシアとイランとトルコの三ヶ国首脳会談後の記者会見の際に同様の発言を行なっています。

何のために私たちとシリアの人々はこのようなことを言ってきたのでしょうか?当然、私たちは反政府勢力を支配している人々、反政府勢力に影響を与えるべき人々の無謀な措置、挑発行為を抑えたかったのです。しかし、残念ながら、抑えることはできませんでした。

4月7日に発生したことを欧米のメディアはこぞって取り上げました。シリア政権が自国民に対して化学兵器を使用したというテーゼが展開されました。しかし、私たちには最初から明らかでした。これはシリア合法政権に反対する人々の不吉な計画を改めて裏付けるものだったのです。ご存知の通り、毒物が使用された場合、それがいかなるケースであれ、専門の国際機関である化学兵器禁止機関の調査が実施されなければなりません。私たちはDr.オベイドとともに技術事務局を訪れ、ドゥーマでの事件の調査のためにOPCWの専門家をすぐにシリアに派遣するよう、事務局長にしつこく呼びかけました。

技術事務局長のA.ウズムジュ氏は、私たちの共同の方策に対して迅速かつ機敏に対応し、専門家グループのシリア派遣を決定しました。彼は誠実で真面目な人物であり、尊敬に値します。

常識で考えれば、OPCWの専門家に現地調査の可能性が与えられるべきです。しかし、米国、英国、フランスはOPCW専門家の作業開始を待つこともなく、すぐに、すべては明らかだ、アサド政権に非があることは疑う余地もないと発言したのです。同時に、自国民に毒ガスを使用したシリア大統領の極めて低劣な本能を黙過したなどと言って、ロシアに対しても告発が行われました。

米国、英国、フランスは、自分たちが国際法の神聖な原則の守護者だと買いかぶっていますが、実際には、国際法を無視し、OPCWを軽視しています。4月14日朝にOPCWの査察官がダマスカスに到着するという知らせがあったにもかかわらず、B.アサド氏への仕返しをあくまでも望む姿勢を考えれば、そのようにしか評価のしようがありません。あと少しでOPCW専門家がミサイル攻撃に晒されたかもしれないのです。これは国際法の基本的な規範を明らかに無視した行動であり、OPCW事務局長個人を軽視した行動であるとともに、主権国家、国連加盟国、化学兵器禁止機関の加盟国に対する侵略です。なにしろ、OPCWは、まさにA.ウズムジュ事務局長のもとでノーベル平和賞を受賞しているのです。

シリア政権への「懲罰」のほぼ最大の根拠となっているのが、「ホワイトヘルメット」の悪名高い偽人道支援者が撮影し、欧米のマスコミが広く拡散させた動画です。この動画には、子どもたちが死にかけている姿、毒物で呼吸困難に陥った人々の姿といった、心痛むシーンが描かれています。

4月7日を受けてすぐに、欧米3ヶ国、すなわち米国、フランス、英国の巨大なプロパガンダ・マシーンが動き始めました。1年前にハンシャイフンで似たような事件が起こったときと、まったく同じスキームです。当時、米国のN.ヘイリー国連大使が安保理理事国に対して「小さな受難者たち」の写真を見せ、あたかもサリン中毒の被害者であるかのように語ったのです。その写真は米国のトランプ大統領を憤慨させ、大統領はすぐに59発の巡航ミサイルをシリアの「シャイラト」空軍基地に向けて発射するよう指示したと言われています。そして、今回もまた、今年4月9日の国連安保理会合でのN.ヘイリー氏の発言を聞く限り、彼女は同じように写真を見せようと考えていたようですが、その後、考え直したようです。心の声が「藪をつついて蛇を出すな」と彼女に言ったのかもしれません。

今日、私たちは、「ホワイトヘルメッツ」の動画があからさまな偽装だったことを証明することができます。したがって、欧米のパートナーたちが、化学攻撃の証拠としてこの資料を参照していることは、完全なる筋近いです。まさにこの点が今日のブリーフィングの目的でした。ブリーフィンは大きな反響を呼び、ポジティブな反応が多く得られました。ホールには執行理事会のメンバー国から数十ヶ国の代表団が出席し、オブザーバー国、化学兵器禁止条約(CWC)の締約国も出席していました。彼らからは多くの質問が出ました。

残念ながら、ホールには米国、フランス、英国の代表の姿はなく、また、EUとNATO加盟国、米国の同盟国であるアジアのいくつかの国の代表も来ていませんでした。彼らは今日のブリーフィングに来る決心がつかなかったのでしょう。おそらく、真実は目に刺さるため、真実を正面から見るのが怖く、ハサン少年の目を見るのが怖いのでしょう。「ネコは自分が誰の肉を食べたのか(何をしでかしたのか)を百も承知している」というロシアの諺が頭に浮かびます。悪いことをしでかし、さっと逃げて身を隠し、今は人目の付かないところに大人しく座って、自分たちには関係ないという顔をしています。しかし、人々はすべて見ています。真実はいずれにせよ露見します。そして、露見させることが、将来の挑発行為を避けるためにはとても重要です。挑発行為は起こり得るのです。なぜなら、またしても米国のパートナーたちが、主権国家シリアに対して再び兵器を使用すると脅しをかけているからです。しかし、そうはさせません。次に、私の友人であるDr.オベイドに短い発言をしてもらい、その後プレゼンを始めたいと思います。

* * *

今日、CWC締約国と国際社会に対して、4月7日のドゥーマで「ホワイトヘルメット」が実施したあからさまな挑発行為の確固たる証拠が示されました。「ホワイトヘルメット」は、まず何よりも英国と米国の納税者を食い物にしている偽人道支援団体です。

皆さんは今日、言葉を軽んじ、訳の分からない馬鹿げた考察にもとづく根拠のない告発を行い、SNSや存在しない人物を引き合いに出すことに慣れてしまっている欧米のパートナーたちとは違い、実際に生きている人々、ハサン少年、医療従事者、今日ここにいる人々といった生きた目撃者を目にしたことを覚えておいてください。彼らは、ドゥーマで本当は何が起こったのかを皆さんに語りました。

たしかに、今日、私たちは誹謗者を捕まえました。世界の世論を誤解に導こうとした人々を捕まえました。しかし、ちっとも嬉しくはありません。そして、この誹謗者たちの悪事を暴いたことで、勝ち誇った気持ちにもなりません。なぜなら、状況があまりにも深刻だからです。

私たちは全員、今、世界で起こっていることを懸念しています。 私たちロシアは常に、フェイクニュースを拡散し、いわゆる情報戦争を起こしているといって非難されています。しかし、今日のブリーフィングとこの記者会見を受けて、本当は誰がフェイクニュースを流し、情報戦争を行っているのかは誰の目にも明らかだと思います。

米国の後見のもとにある者が捏造した「ホワイトヘルメット」の偽動画は長く影響を残すものでした。おそらく、世界は1962年のキューバ危機以降初めて、米国とロシアの直接軍事衝突の脅威が迫る危険な一線に近づきました。今はその脅威は去ったように思われますが、残念ながら、安心できるだけの材料はありません。依然として、主権国家シリアに対して兵力や武力の行使を脅す発言が行われています。これはつまり、衝突の、大きな衝突の脅威は、今も残っているということを意味します。あまり嬉しくない連想が生まれます。今回の偽装、ドゥーマでの挑発行為は、その恐ろしさにおいて「グライヴィッツ事件」を思い出させずにはいられません。1939年、ナチスがポーランドによるものと見せかけて、ドイツ国境地帯のラジオ局襲撃をでっちあげた事件です。この挑発行為がその後どうなったかはご存知の通りで、ドイツが第二次世界大戦の口火を切ったのです。

あのときのように、この危険な道から離れなさい、対立路線を止めなさいと言いたい。今、私たちが新たな局面を目にしている「冷戦」が「熱い」戦争に発展するのを許してはなりません。

軍事衝突路線を捨て、発生する問題を相互尊重に基づき、お互いの利益を勘案して解決する道を模索するという、正しい結論を導き出すことが必要です。私たちは、古くからのシリアの土地に平和が戻り、苦悩の多いシリア国民が平和の実りを手にできることを心から期待しています。

ロシアは、シリア情勢の政治的解決を促進するため、できることは何でもやります。その証拠のひとつに、ソチで実施し、成功しているシリア国民対話会議があります。私たちはこれからも、シリアにおける総合的で包括的な政治対話が和解と正常な生活の回復につながるよう、できる限りのことをやっていきます。

年月が経ち、今ここにいるハサン少年が成長し、大人になり、尊厳あるシリア国民となって、自分の職業を選ぶ日が来ることを期待しています。その職業は医師かもれないし、エンジニアかもしれないし、教師かもしれない。また、あるいは有名なシリアの外交官になり、国際場裡で立派に自国を代表するかもしれません。